手が小さい人のピアノ練習法


** 手が小さい人の問題点 **

今回は、“手が小さい、指が長くない、小指が短め” などの理由で、演奏が思うようにいかない方のために、ピアノの練習法や対処法などを紹介したいと思います。

手の小ささには、全体的な指の長さが短めであったり、一本の指だけが短めであったり、または両手が小さい、右手のみ、左手のみが小さいと、人によって様々なケースがあります。

手が小さい場合の問題点や悩みには次のようなものが挙げられます。

・オクターブがギリギリ届くほどで、演奏中の手の形が崩れる
・小指でのメロディーがうまくできない
・手が広がりにくく、オクターブの音がでにくい
・右手と同じように左手でのオクターブの演奏ができない
・演奏の音が小さく聴こえる
・手が小さいのでつい強く弾いてしまい、叩くような音になってしまう
・一本調子な無表情な音にしか聞こえない
・広い音域の和音やアルペジオが綺麗に弾けない
・全く指が届かないためアルペジオで演奏しても、力が入り綺麗に響かない


これらは実際に読者から寄せられる相談でもあります。

とくに手が小さい人にとってオクターブの演奏は悩みの種になっているのです。
そのオクターブの演奏について考えてみます。



** 手が小さい場合のオクターブ対処法 **


この悩みを解決するにはどうしたらよいのでしょうか?
具体的な対処法をみつけていきたいです。


ギリギリでオクターブに届く場合

ギリギリでも届くなら手を広げる訓練をすれば「使える手」になる可能性はあるので、根気よくトレーニングします。

あまり難しくなくてオクターブを含む曲をたくさん弾き、先ずは「馴れる」ようにします。

負担の軽い曲を数多くこなしていくうち次第に楽に弾けるようになってくるでしょう。
ただし、馴れるまでの曲数、あるいは日々の練習回数や期間については個人差が大きいです。

注意したいのは、ギリギリの場合はどうしても手首が上り、手の山(第3関節)が陥没しがちですが、そのままでは音量が出ません。
フォームを造るよう意識しましょう。



もう少しでオクターブに届く場合

手をいっぱいに拡げて、もう少しでオクターブに届きそうな場合は、ストレッチがおすすめです。
ストレッチは手全体をまとめて広げるのではなく、指間を広げると効果的です。


 「指間を拡げるストレッチ」

膝の上で、1−2、2−3、3−4、4−5の指間を順次に拡げます。
それぞれ5〜10秒間広げます。
ゆっくりとした動作でそれぞれを数回ずつ繰り返します。
手が拡がってもフォームが保たれていることが大切です。
一度に長時間のトレーニングは手を傷める危険性があるので、短時間で切上げ復習を多くするようにします。
これは半年、1年などの長期計画で指間の拡大を図るものです。



「私は手が小さいのでいつも広げるようにしています。この年になってもまだ広がり続けています」と70歳になるある女性ピアニストもおっしゃっていました。
時間はかかりますが、諦めず続けましょう。



全く届かない場合

手をいっぱいに広げてもオクターブに遠く及ばない場合は、ストレッチなどでも難しいと言えます。
あまりにも手が小さい場合の対処法としては、速いテンポでのオクターブ演奏は諦め、音を省略するなどで対処することも考えます。



** オクターブの練習で大切なこと **


手が小さい人の場合、オクターブの上声(右手の場合)は全部第5指で弾くのがよいです。

また、オクターブの演奏では「手首の柔軟性」が大切です。
とくに連続オクターブになると手首の運動能力も必要になるので、日々トレーニングをします。
クラーク(クーラック)著「オクターブの練習」(全音)にヒントとなりそうなことが記載されているので、一度読んでみるのもよいでしょう。


それから、左手のオクターブが苦手な人もいると思います。
左手は使用頻度が低いため右手よりも動きが悪いのが普通です。
「左手は右手の10倍さらえ」という先生もいるくらいですから少しでも回数多く練習しましょう。


身体や手が小さいと不利な点がありますが、運動能力がアップし、メンタル面が充実すれば十分カヴァーできます。
それは今後の練習次第ともいえるでしょう。



** オクターブの練習方法 **

手は小さくないけれど、“オクターブが掴めない”という場合もあります。
これは「ポジション移動に対する正確さと反応」の問題と、もうひとつは「手と指の幅感覚」の問題があります。
いずれも「不慣れ」が原因なので慣れるのが正道です。

はじめは、「今現在、自分にできる弾き方」を見つけ、それを繰り返します。
苦手な方はおそらく非常にゆっくりとしたテンポ、少ない音数になるかもしれません。
無理をし失敗が多くなると上達どころではなくなってしまいます。
失敗の多い速いテンポや広範囲の弾き方では、「テスト」として弾くだけにします。

このように、「テンポ」と「音の数」を自身に合ったものを見つけて練習を重ねます。
一度弾けただけで「もう弾けた」と思い込みがちですが、「人は忘れる生き物」だということを忘れてはなりません。
記憶を「定着」させることが大切です。

「よく弾けてから」の「回数」と「期間」が「本当の練習」と言えます。