ピアノコンクールで入賞するには
** 【ピアノコンクールで入賞できない】 **
読者から寄せられるメールの中には、“コンクールに向けてピアノの練習をがんばったのに、結果がついてこない”という悩みがあります。
このような “努力の割に結果が出ない” “コンクールで上位に中々はいれない” といった内容はよく届く悩みです。
仮に本番でミスをしたのであれば原因が思い当たるので納得できるところもあるでしょう。でもミスなく弾けたのに結果が出ないという経験、これだと何が良くなかったのかと、非常に悩んでしまいます。
なぜコンクールで入賞できないのか?
間違えずに演奏してもコンクールの成績が良くないとしたら、ミス以外の他の原因を調べてみましょう。
コンクールなどの本番では、演奏の目的は、曲の良さを聴く人に伝えるところにあります。
この問題は個々に演奏を聴いて判断することも大切であり非常に難しいので、逆に“どのような人が入賞しているか”という方向から考えてみましょう。
ピアノの演奏は、大きく分けて次の2つの視点から評価されます。
1.音楽表現の豊かさ
2.完成度の高さ
1.音楽表現の豊かな人は、譜読みが早い時点で完成し、暗譜やテクニック面での不安もなくなります。そのため、音楽表現に集中して練習する期間が長くなり、表現の記憶も定着することができます。
リラックスし楽しみながら演奏するので、演奏者の良い精神状態が聴く側にも伝わり、楽しめる演奏になります。
リズム、フレーズ、和声、形式、ムードなども、わかりやすく表現できた演奏となるのです。
表現がわかりやすい、変化に富む、音色が美しい、聴くと癒される、などはプラスの判断要素になります。
中でも聴く人(コンクールでは審査する人)を「感動」させることができれば十分なアピールができたと言えます。
2.完成度の高さも大切で、これは1音1音が磨かれた状態をさします。
意識のしっかりしたタッチ、正確な音の長さ、ゆるぎないテンポなどです。
ただし、こちらが全面に出てしまうと、機械的に聞こえてしまう場合も多く、早い時点で卒業しておきたい要素でもあります。譜読みが遅れるとこちらが前面に出た演奏になりやすいです。
レベルの高いピアノコンクールや全国大会の本選では、ミスがないことやタッチなどのテクニックは十分に仕上がってなければなりません。そのうえで心に届く演奏、すなわち「表現力の高さ」と「曲の完成度」の2つが大きなポイントなのです。
たとえ上手くいかない箇所や、まずい箇所があったとしても、良いところがそれに勝っていればよいのです。
このように何らかのかたちで、人の心を動かすことができれば良いわけですが、演奏の中に何かアピールするもの、自分の良さがあればより人の心を捉えることができます。
ただ間違えないで弾くだけではコンクールの成績は上がりません。きらりと輝く演奏が必要です。
音楽表現の豊かさも、完成度の高さも、仕上がるのがコンクールギリギリになってしまっては良くありません。
したがって入賞や上位に入る人は、これらのポイントをクリアできているということなのです。
心に届く表現力豊かな、完成度の高い演奏にするための条件はいくつかあります。 そのうちとくに大切なものを1つ紹介すると、「1音1音心を込めて磨いた音にする」こと。
これは、意識的に出した音、心を込めて「造られた音」でなくてはなりません。
無意識に出てしまった音では届きません。
例えば、下記の練習方法は、「どんな練習をしていれば自信を持ってコンクールに挑むことができるのか」と悩んでいる生徒や指導者の方にもオススメです。
<練習方法>
心に届く音にするにはタッチ(テクニック)を磨く必要があります。
タッチの要素はいくつかありますが、そのひとつひとつをチェックしてみましょう。
・打鍵前の心の準備
・打鍵の高さ
・打鍵のスピード
・打鍵の深さ
・脱力
・フォーム
これらの要素のうちいくつ意識できるか、何が欠けているか1音1音確認してみます。
意識できる要素が多いほど良いわけです。
練習しているのに、素質が十分なのに、結果が今一つといったケースは、練習のプロセスに問題がある場合が多いので、練習について今一度考え直してみると良いかもしれません。
** 【本番で練習どおりに弾けない、緊張でミスをしてしまう】 **
ピアノコンクールに関する悩みは他にもあります。
・コンクールで練習通りに上手くいかない、練習ではしたことのないミスをすることがある
・本番ではなかなかミスなく弾けない
・普段の実力を出せない
・コンクールなど、人前で弾くと緊張しすぎて、途中で止まってしまう
など本番ならではのミスに関する悩みです。
“コンクールで緊張しないためにはどうしたらよいのか”を探していてもすぐに答えは見つかりません。
緊張しない方法を探すより、緊張に慣れることが大切なので、場数を踏み、緊張したときの自分の心をコントロールできるようになるとよいでしょう。
例えば、年に3〜4回本番を迎え、本番から本番までの期間を空けすぎないようにしてみましょう。
プロのピアニストも緊張することがありますが、そう見えないのは豊富な練習量と場数によって、メンタル面のコントロールがうまくいっているからです。
ただし、緊張が強すぎたり、予期せぬ緊張に出会うことは避けたいので、緊張を軽減させる方法についても考えてみたいと思います。
練習どおりに弾けない、本番でミスをしてしまう。 その原因として、「技術面に不安を抱えている」ということが考えられます。
技術面に不安を抱えたまま演奏すると表現に集中できず、音楽的でない演奏になりがちです。 暗譜を心配しながら弾いてものびのびと弾けません。
曲中、不安な個所や不安な要素が多過ぎるのはよくありません。 曲が難し過ぎたり練習不足だったりするとそうなる可能性が高いです。
それを解決するには、基礎を充実させる必要があります。
ソルフェージュ面も充実させる必要があるでしょう。
また、何度も伝えてきましたが、暗譜は本番近くなってから慌ててしないようにしましょう。
不安が残ってしまいます。
練習初日から取り掛かり、すぐに覚えられる音の数だけピックアップし、繰り返します。
欲張って長い部分を取り出したり、すぐに両手で弾かないほうがよいでしょう。
本番近くの練習では、易しいと思われる部分も片手で弾いてみたり、今まで弾いたことのないくらいのゆっくりとしたテンポで(部分練習)弾いてみたり、途中どこからでも反応よく弾けるようにし、左手だけ自信をもって弾けるなどをチェックしてみましょう。意外とできていないことに気づきます。
練習は自信をもって、リラックスして弾けるところまで弾き込みたいです。
それにはやはり練習時間の確保は大切です。
指の動きは練習時間の長さ・回数に比例してよくなります。
さらに、練習の質を良くする研究も必要です。
練習のバリエーションは工夫すればいくらでも創作できます。
面倒でも細かい練習を普段から丁寧にしておくと精神面が鍛えられ、緊張しても大丈夫な精神状態となるでしょう。
** 【コンクールに出る生徒への指導について】 **
ピアノコンクールに対する生徒への指導は次のように考えてみるのも良いかもしれません。
コンクール中心に課題をこなすのではなく、基礎を固めるついでに余裕があればコンクールに出るといったかたちです。
コンクールの最中も基礎課題を必ず同時進行させ、生徒があまり難しく感じない曲ばかりで進めます。
これは、「既習要素の復習」が目的となっています。人の記憶は復習時に定着するからです。
一方、難しい曲しか練習せずこなす曲数が少ないと、次に同じ要素に出くわすまでにせっかくの記憶が時間経過とともに消えてしまいます。
モチベーションを高めるためにコンクールに出るのは良いことです。
勉強になる曲なら長い期間持つ価値があります。
コンクールに出るなら、その生徒に相応しい課題曲のコンクールが良く、曲選びは難しいですが、勉強価値のある曲を選びたいものです。
また、コンクールの曲の量がどんなに多くても、またその曲が練習曲として有効なものであっても、必ず並行してベーシックなテキストを練習したほうがよいでしょう。
長い目で見ることが大切で、将来の良い結果に繋がるようにしたいです。